戦国武将の家紋一覧
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大名・武将
戦国の世とともに変容する家紋事情
戦国時代は、「下剋上」の言葉に象徴されるように、それ以前に存在した「守護大名→守護代→在地領主層」の各階層間の「不文律ながらも厳格に固定化された上下関係」が打ち壊され、新興勢力・武将が続々と台頭した時代です。
前時代までの実績で権力・権益を手にし、長らくこれを維持してきた有力武家が次々に没落していく中で、それらの家々を象徴した各々の家紋もその意義を少なからず変えていくこととなりました。
家紋の役割の一つだった出自の明示
そんな中にあって、その家名を保つことで多くの武家の家紋が従来持っていた「出自(ルーツ)を端的に表し、そしてその結束を示す」という意義を守った名門武家も同時に存在しました。
著名な例で言えば、土岐の家のみならず、"一門・後裔の証で且つ、結束の象徴" でもあった「土岐の桔梗一揆」で知られる「土岐氏」の『桔梗』紋や、武田氏を筆頭に「甲斐源氏」一門を示した『菱・花菱』紋、宇多源氏・佐々木一族の証とも言える『目結』紋などが挙げられるでしょうか。
特定の氏族イメージの弱化を経て人気紋へと変遷した『鷹の羽』紋
一方、現代でも使用家系の多い『鷹の羽』紋は、中世初期以来の長らくの間、九州南部に影響力を保持してきた「菊池氏」およびその氏族を象徴する紋と、かつては見なされていたようですが、戦国初期の菊池宗家の没落後は必ずしもその意義を持った紋章とまでは言えない状況となりました。
鷹の羽紋は、安芸・広島藩主家の「浅野氏」ならびに、多くの優秀な幕閣を輩出した「阿部氏」の使用でも知られますが(いつ頃から使用が始まったのかについては不明)、これらの家は戦国期に入ってその家名を高めた新興勢力といえる存在であり、さらに菊池氏との血縁上の明確な繋がりは確認されていません。
その他の鷹の羽紋の使用も新興武家が目立つようですが、そのほとんどはやはり菊池氏とは関連の薄い出自を持つようで、彼らの多くは(鷹の羽紋の由来の面から来る)「尚武の意味合いの強さ」が武家の象徴としてふさわしいという観点からこれを選択したと見られています。
こうした事態は、(菊池氏の没落により)鷹の羽紋が長年まとっていた「専用イメージ」の弱まりが招いたという面も指摘できそうです。いずれにせよ、鷹の羽紋は、紋章が持つ従来の意義が変化した例の一つとして挙げることが出来るのではないでしょうか。
権威性を高めたがゆえに氏族独占が崩れた『杏葉』紋
また、『杏葉』紋も戦国以前にまとっていた意義が変化した紋章の一つと言えるかも知れません。杏葉紋の「著名な使用例」と言えば、やはり北部九州の名門武家である「大友氏」が挙げられるでしょう。
九州北部地域における杏葉紋は、"名門・大友氏による使用" に加えて、立花・戸次・田原・柴田といった "一門衆や勲臣に紋を与えて「同紋衆」として遇するという特別な仕組み" の構築によって、ある種のステータス・権威性を帯びた「憧れの紋」とも言うべき特異な立場を形成していたといいます。
しかし、大友氏が「龍造寺氏」と争った「今山の戦い」の折り、勝利した龍造寺側が戦勝の「戦利品」として、上述の通り「鎮西における憧れの紋」であった大友氏の杏葉紋を自家の紋として用いるようになるという出来事が発生。
この龍造寺氏の杏葉紋は、その重臣で後に主家である龍造寺氏から独立した「鍋島氏」へと引き継がれ、(豊臣政権以降、大名としての地位を失った大友氏を尻目に)肥前佐賀藩主・鍋島家を象徴する紋章として知られるようになりました。
これらの経緯により杏葉紋は、必ずしも「大友氏とその氏族を示す紋章」とは言えなくなったことから、これもやはり「戦国期を境に従来の意義が変化した家紋」の一つと見なすことが出来そうです。
専用紋を用いるイメージの強いあの大名・武将もこの頃は汎用紋
戦国時代とその後の江戸幕藩体制下における家紋の変化も見逃せません。まず、『丸に卍』紋で知られる徳島藩主・蜂須賀家ですが、戦国期の蜂須賀(小六)正勝の時代は「抱き柏」紋の使用であったことは押さえておきたいところです。
また、それぞれの幕藩太守・固有の専用紋として後世に伝わる『加賀梅鉢(加賀藩主・前田家)』『彦根橘(彦根藩主・井伊家)』『浅野鷹の羽(広島藩主・浅野家)』『池田蝶(岡山藩主・池田家)』ですが、戦国期においては順に『梅鉢』『丸に橘』『丸に違い鷹の羽』『揚羽蝶』という、いわゆる『汎用紋』を用いていたというのも興味深いところです。
このように、戦国時代の家紋に丁寧にスポットを当てていくと、その以前と以後で家紋を取り巻く状況も少なからず様変わりしていることがよく分かりますね。
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