【丸に五三桐】の意味や由来は?『丸に』の有無による違いとは?家柄に関連あり?

丸に五三桐

丸に五三桐の素材。高精細フリー画像

元は皇室専用の紋章で国家指導者たちも使用し、高い権威を誇った紋章が元となった『丸に五三桐』。『丸』の有無による五三桐との違いは、家柄との関連?今回はその辺りも含めて「丸に五三桐」の意味や由来を解説します。

丸に五三桐は、高級木材として有名なキリの木をモチーフにした桐紋種の一つです。今日では定番家紋としてお馴染みで、高い普及率と共に、紋付きのレンタル衣装に用いられるなど、家紋の中では割合に目にする機会が多い部類だといえます。

しかし、そんな身近な家紋である桐紋が、かつては皇室が専ら用いた格式の高い紋章だったことはご存知でしょうか。今回はまず、そんな格式の高い紋章が「なぜ一般個人に広く普及した定番家紋となったのか?」について迫ってみたいと思います。

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格式の高い紋章となった由来は?

格式の高い紋章とされるゆえんは、先にも登場したように、古くは皇室の紋章であったが故ですが、では桐紋はどのような由来があって、皇室の紋章となったのでしょうか。それは古代中国の桐にまつわる伝説が大きく関係しています。

国家指導者には待望の吉兆であった「鳳凰」。

中国の神話に登場し、吉兆を司る架空の霊鳥である[鳳凰]は、「徳の高い聖天子の出現を待ってこの世に現れる」とされますが、[詩経]に「鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず」とあるように、中国におけるキリは、鳳凰にとって唯一の止まり木であるとされ、神聖視の対象でした。

鳳凰の出現は「自らが徳の高い王者」であることの証明ともなるので、その止まり木であるキリは、中華圏の指導者にとっては大切な縁起物だったのです。

この中国の皇帝でさえも有りがたがった鳳凰伝説は、技術・文化・学問・思想などの、あらゆる面でその強い影響を受けていた当時の日本とその指導者が、自らに取り入れたとしても、何ら不思議はありませんでした。

こうして桐紋は皇室専用の紋章となった。

古代中国との交流を通す中で、鳳凰伝説や桐紋は日本にも流入し、上流階級はそのエピソードとともに文様として活用し、華やかな朝廷文化を彩ったことは想像に難くありません。

桐紋はその鳳凰の謂れから、やがて臣下の者の使用がはばかられ、日本の天子たる天皇が専ら用いる慣例が出来上がったと思われますが、事実上、天皇の文様・紋章として確定したのは、西暦820年に[黄櫨染御袍=こうろぜんのごほう]が詔勅により天皇の正装として定められた事が挙げられます。

今に続くこの伝統的な衣装に用いられる文様は、桐紋(正確には"桐竹鳳凰に麒麟"の文)である事から、いかに上流貴族とはいえ、天皇の臣下である立場を考えれば、天皇の正装に用いられる文様を使用する事に、遠慮が働くのは当然の結果と言えるでしょう。

皇族以外の者に堂々と桐紋の使用が可能となった経緯は?

以降、長らく皇室専用の紋章として定着していた桐紋でしたが、鎌倉幕府の滅亡後、後醍醐天皇により足利尊氏へ桐紋が下賜されたことで、臣下の身分である者が表立って桐紋を使用できる"前例"が作られました。

天皇のもとから国政の実権が失われて久しく、また(現代の視点から見れば、)天皇から国政執行の委任を受けた立場と言える、武家の頭領・足利将軍家に桐紋が下賜されたという事実は、長らく日本政治における"慣例"となります。

その後、戦国期と織田信長の死を経て、天下統一を果たした豊臣秀吉にも、その慣例に従い、時の後陽成天皇より桐紋が下賜されます。

桐紋を賜った指導者たちは桐紋の権威をその治世に活用した。

桐紋を正式に使用する権利を得た足利尊氏は、自身の有力一門衆(足利氏の分家)を中心に桐紋の下賜を行います。また尊氏だけではなく、歴代の足利将軍も折を見て配下の守護大名に、やはり下賜を行っています。

また室町時代から戦国期を経て、自らの単独政権を樹立した豊臣秀吉は、足利将軍以上に桐紋を有効活用します。配下の大名家への賜与のみならず、自ら建立した城郭・寺社の外装から、発行した貨幣にまで桐紋を用いたのです。

指導者から桐紋を賜った大名家は、さらに自らの配下武将にその桐紋を賜与するケースも多かったといいます。とくに豊臣政権下では、秀吉による桐紋の大盤振る舞いにより、中下流の武士階級や一般庶民にも身近な存在となっていきました。

そして庶民へと普及していく丸に五三桐。

豊臣政権下で、庶民の目に触れることも珍しく無くなった桐紋ですが、江戸幕府においては、徳川将軍家による桐紋の使用は行われず、代わりに累代の[葵の御紋]を幕府の象徴に据えて厳しく使用を制限したため、一時ではありますが、桐紋は国政に携わる紋章ではなくなりました。

そして江戸時代は、その時代背景から、それまで家紋を持っていなかった一般庶民でも、家紋を使用するのが当たり前の風潮となり、それに伴って家紋の種類も数も大幅に増大し、家紋文化の成熟も促されました。

そんな中、これまでの経緯から高い知名度と権威を誇りながら、(葵の御紋とは異なり)何ら使用に制限のなかった桐紋は、一般庶民のいわば"急速に高まった家紋需要に対する重要な供給源"の役割を果たし、すっかり世間でも一般的な家紋へと変貌していきます。

丸に五三桐はこうして定番家紋となった。

この傾向は、"国政執行の象徴"としての実績から、敷居の高い印象のある[五七桐]ではなく、貨幣にも利用されるなど、生活に密着した一般に馴染みのある[五三桐]に特に顕著でした。

このようにして丸に五三桐は、最上ともいえる格式を備えていながら、広く世間に認知され、利用される一般性をも兼ね備えるという不思議な"立ち位置"を獲得したのです。

※五三桐の意味や由来をもっと詳しく知りたい方は下のリンクから。続いて"丸に"の解説に移ります。

丸に五三桐の"丸に"とは?

突然ですがみなさんは、元となる家紋、例えば[抱き茗荷]だとか[下がり藤]などの外側を、丸い図形で囲ってあるケースを目にしたことは有りませんか?

外側の丸の"有る無し"で、別の家紋としてカウントします。

そもそも家紋の外側の"丸の有る無し"に注意が行かなかったり、気がついたにせよ、状況に合わせて表現を変えただけで、丸の無い場合と同様のものだと思われている方も、かなりいらっしゃるように思います。

しかしこれは、それぞれ[丸に抱き茗荷]や[丸に下がり藤]などの名前がついた、れっきとした単独の家紋として分類されています。

今回取り上げた[丸に五三桐]も当然、基本形となる[五三桐]とは"別の家紋"となります。それでは、この"元となる家紋を丸で囲う"という行為には、一体どういった意味があるのでしょうか?

丸で囲うなど、何らかの"変形を施した"背景とは?

丸で囲うことに限らず、元の家紋に何らか要素を付け加えたり、削ったりするといった変形を施す行為は、家紋にまつわる文化としてはよく有る事ですが、それは[本家]に対する[分家]や[主人]に対する[家来]などに、家紋の相続や下賜が行われた場合、元の使用者をはばかったり、または混同が起こらないよう配慮するために行われました。

さらに[本家]や[主人]に対する兼ね合い以外にも、江戸時代に一般庶民層まで家紋が普及した際、希少性に配慮し、いわゆる通紋(とおりもん=少数の使用家系で独占できなくなった一般性の強い家紋)化を避ける意味で、一部の有力大名家の代表紋を[そのまま用いてはならない]とした事も、元の家紋に変更を加えて使用する要因となります。

"丸に"は変形バリエーションの定番。

そのような背景もあり、一口に「変形を施す」と言っても、"丸形"や"方形"のような単純な図形ばかりではなく、権威や人気の高い家紋を中心に、さまざまな変形のバリエーションが誕生しました。

複雑なものでは、[五瓜][車][熨斗輪][鞠挟み][藤輪]など、"家紋同士の組み合わせ"とも言える、[家紋で家紋を囲う]という変形も見られるようになります。

「なぜそのように変形したのか」についての経緯は、それぞれにエピソードが有るのでしょうが、一般論として家紋は、分家や賜与などを繰り返す事により、元の図案から少しづつ変形していきますから、加えられた変更が大きいほど、宗家や主筋から遠い家柄とも言えるでしょう。

そのような中でも、この"丸で囲う"という手段は、最も多く採られたオーソドックスな変形と言われています。分家の際に、本家から相続する家紋を丸で囲うだけで、[違い]と[関連性]を示せるというシンプルさが変形の定番となった原因のようです。

オリジナルを凌駕する普及率?

一般的に考えれば本家よりも分家の方が、圧倒的にその数は多くなることから、変形の元となったオリジナルの家紋より、普及率が高くなる事も珍しくありません。

それはこの[丸に五三桐]に関しても言えるようで、基本形である[五三桐]よりも普及率は高いとされ、日本家紋研究会の調査によれば、丸に五三桐の普及率は、桐紋全体の7割ほどを占めるとされているようです。

以上が家紋・丸に五三桐の解説でした。その他「桐紋」の一覧ページは↓こちらから。

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丸に五三桐のフリー画像素材について

[家紋素材の発光大王堂]は、家紋のepsフリー素材サイトです。以下のリンクからデータをダウンロードして頂けます。家紋のフリー画像を探しているけど、EPS・PDFの意味がよくわからない方は、ページ上部の画像をダウロードしてご利用下さい。背景透過で100万画素程度の画質はあります。

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