丸に三つ柏|意味や由来の解説。家系 苗字 先祖 有名人を探るヒントに?|家紋の発光大王堂

丸に三つ柏

家紋・丸に三つ柏の素材。高精細フリー画像

家紋・丸に三つ柏は、伊勢や熱田の神宮などと関わりが深く、島左近や山内一豊といった多くの戦国武将も使用した柏紋の一種です。今回は、その意味や由来、使用した武将や有名人を紐解いていきますので、皆さんの家系のルーツや先祖・苗字といった種々の疑問を探るヒントにしていただければと思います。

家紋「丸に三つ柏」は、落葉樹に分類されるカシワの木をモチーフとしたカシワの家紋の一種です。

通常、落葉樹とは、紅葉ののちに葉枯れを起こし、冬の間に落葉してしまうことが一般的ですが、このカシワの木は、翌春に新芽が芽吹くまでは「枯れ葉のままで枝にとどまり続ける」という珍しい特徴を示すことで知られています。

このカシワの(間を置かずに新旧の葉が入れ替わるという)特徴が、『代が途切れない』『世代交代が "切れ目なく" 続いていく』と解釈され、カシワは古来より "縁起の良い" 植物として捉えられてきたようです。

この記事では、このカシワの木がどのような背景や経緯から家紋となり、そして現在見られるような広範な普及に至ったのか、そしてその意味や由来、歴史上の著名な使用者についても併せてご紹介したいと思います。

カシワの木はどのようにして家紋となっていったのか?

家紋「丸に三つ柏」のモチーフとなったカシワの木は、太古の昔より日本人と関わりの深い植物でした。

カシワと日本人との太古の関わり

古代東アジア周辺の様子が記された中国の歴史書(隋書・東夷伝)には、「日本人は、皿やまな板を使う習慣がなく、カシワの葉に食料を盛って…」といった内容の記述があることから、かつての日本人にとって、カシワの葉が "食器" であったことは、国内外に広く知られた事実だったといえます。

こうした習慣は、土器や陶磁器の発達にしたがって徐々に廃れていったようですが、かつての日本人にとってカシワの葉は、"日々の営み" の根幹をなす重大要素である『食』に深い関わりを持つ存在だったことは間違いないようです。

なぜカシワの葉が「神聖視すべき存在」へと至ったのか?

この「カシワの葉」が、日本固有の民俗宗教である『神道』の儀式において、(現在に至ってもなお)重要な役割を果たしている背景にも、上にご紹介した古代日本に特有の "生活様式" が深く関わっています。

神道とは、太陽や海、山、川などといった(古代日本人の日々の営みに密接に関わっていた)『身の回りの自然』を神格化した「自然崇拝」的タイプの原始宗教から発展したとされる宗教です。

そのためそれは、(大陸においてさまざまな宗教同士が影響しあった結果、壮大で重層的な教義・文化を内包するに至った)いわゆる世界宗教とは異なり、「崇拝の対象に『供物』(米、酒、旬の海・山の幸といった『飲食物』)を捧げて祈る」という、比較的シンプルな構造をしたものといえます。

シンプルであるがゆえに、その教義や儀式を構成する(数少ない)個々の要素は、それぞれが自ずと重要かつ象徴的なファクターとなり得るのですが、もちろんこの『供物』も神道を形作る上での重大要素の一つとして数えられることになります。

この『供物』を盛る器に用いられるのが、「伝統的にカシワの葉であった」のは、先にご紹介した「古代日本人の生活様式」に大きな関わりがあると見てよいでしょう。

このような伝統は現行の神道にも引き継がれおり、その最重要の儀式である『大嘗祭』や『新嘗祭』においても、供物を盛る器には "竹のひご" を用いて、箱型(盛り付け用)と皿型(取り分け用)に成形した "カシワの葉" が用いられているといいます。

このような背景を鑑みれば、神道奉祀者たちが『供物を盛る器』を「神事を象徴する重大要素の一つ」として "神聖視" し、カシワを『神紋』として掲げる動きが出たことも、至極当然の成り行きといえるのではないでしょうか。

カシワは神道関係者だけに限らず、多くの人々に親しまれた存在だった

また、こうした神道儀式の影響からか、古くからカシワの木は、貴族社会においても神聖視の対象だったようで、「枯れ葉が翌春まで落葉しない」というカシワの木に特有の特徴ですら「葉が落ちないように守る神が宿っている」とする解釈がなされていたようです。

これを当時の人々は『葉守の神』と呼び、そしてこの表現は『後撰和歌集』『新古今和歌集』といった和歌集や、『枕草子』『源氏物語』といった文学作品などに登場しています。

以上のことを踏まえると、カシワの木は当時の人々に広く認知され、親しまれていた存在だったことがわかります。

カシワは数ある家紋の中でも最古参に分類される伝統ある紋章

当時の社会においてこうした存在だったカシワは、かなり以前から「文様」という名のビジュアル化がなされ、衣服や調度の装飾に用いられていたといいます。実際、平安中期の「前九年の役」が題材の『前九年絵巻物』には、すでにカシワの文様が描かれているシーンが登場しています。

しかしこういった現象は、なにもこのカシワの木だけに限った話ではありません。

当時の社会において、馴染み親しまれた植物・自然・器材といった対象物の多くは「文様」の題材となって華やかな貴族社会で愛好され、やがて伝統文化と化していくのが一般的だったといえます。

さらに、こうした「伝統的な文様群」の中から初期の家紋は誕生し、そしてその文化が花開いていくわけですが、このような流れは、このカシワの場合においても同様に当てはまります。

成立したカシワ紋(丸に三つ柏)の普及状況とは?

「家紋文化」成立当初のカシワ紋は、(神道に携わることを生業とする)『社家』による使用が特に盛んでした。その主立ったところを例に挙げれば、

●伊勢神宮の上位神官家系の一つである「久志本氏」

●熱田神宮の大宮司を世襲した「千秋氏」

●宗像大社の大宮司を世襲した「宗像氏」

●吉田神道を創始した「吉田氏」

●吉備津彦神社の「大守氏」

といった、そうそうたる大社(格式高く有力な神社)の関係者が並ぶことになります。

しかしそれは、これまでにご紹介したように、「カシワが神事において欠かすことのできない象徴的な存在である」という背景を考えれば、ごく自然な成り行きだったといえるでしょう。

武士へと使用が広がった要因とは?

まずは、社家を中心にその使用が広まったと見られるカシワ紋ですが、徐々にその使用家系は武家へも拡大していくことになります。

武家の家紋の "使用へと至る経緯" にはさまざまなパターンが存在しますが、中には「有力な神道勢力」との関係性(例えば、単に信仰の対象(氏神)であったり、『ご神領』(神道勢力所有の荘園)の管理・運営代行者(荘官)であったりなど)が、その由来となったケースも一定数存在するようです。

京都・賀茂神社のご神領(三河国・賀茂郡)が根拠地の一部であったとされる徳川(松平)氏の「葵」紋や、阿蘇神社の氏子であったとされる菊池氏の「鷹の羽」紋などが、その著名な例といえるでしょうか。

カシワの紋章も上記のとおり、多数の神社や神道関係者に使用されていたため、それらと『氏神⇔氏子』などの関係にある武家の中に、カシワを家紋として据える者が現れても不思議ではありません。

また、最初にご紹介したカシワの特性から、『代が途切れない』『世代交代が "切れ目なく" 続いていく』とした解釈に、縁起をかついだ例も伝わっているようです。

当初は桓武平氏の系統の一つが重んじたことで知られた

カシワ紋を使用の代表的な武家といえば、古くは『葛西氏』が挙げられます。

一般的に葛西氏といえば、"ごく平均的な戦国大名の一つ" としてのイメージが根強いかもしれませんが、その成立は古く、平安末期ごろにはあの「源頼朝」に与してその覇業を支えており、その後、東北の地において長くその命脈を保った武家の名門ともいえる存在なのです。

この葛西氏のルーツである秩父氏や豊島氏もカシワ紋を使用したとされ、また多数に上った葛西庶子家の多くも主家に倣ってカシワ紋を使用するケースが多かったといいます。

このため、葛西一族にとってのカシワ紋とは、土岐氏の桔梗紋や武田氏の菱紋などと同様に、一族としての証や結束を示すための象徴的な役割を果たすものだったのかもしれません。

有名戦国武将を中心に大小さまざまな武士による使用がなされた

その後のカシワ紋は、系統を異にするさまざまな武家による使用が見られるようになります。

よく知られるところでは、土佐の『山内氏』や近世以前の『蜂須賀氏』、中川清秀で知られる『中川氏』、石田三成の側近で知られる『島左近』などが挙げられ、この家紋が名だたる武将に使用されていたことが分かります。

さらに『見聞諸家紋』(室町時代に成立した家紋集録書)によると、水原・雀部・野間・上林・朝日といった各氏による使用が確認されるなど、カシワ紋は武士階級に広く浸透した家紋の一つといえます。

丸に三つ柏が広範な普及を誇る代表的な家紋の一つとなった要因とは?

江戸時代以降は、多くの庶民にも広く用いられるようになった『丸に三つ柏(カシワ紋)』ですが、その要因として挙げられるのは、(武士の場合と同じく)信仰上の理由や、それとは別に、大小の武士階級に広く普及していたという状況ではないでしょうか。

信仰上の理由というのは、カシワ紋は『神紋』や『社家の家紋』として全国的な広がり持っている紋章ですから、単にその氏子(信者)を中心に使用が広がりやすい環境だったということです。

また、大小さまざまな武士に普及していたことにより、「『地域の領主層』(いわば身近な名門)にあやかる」という理由で家紋を選ぶ人々を取り込みやすい状況だったことも大きいといえそうです。

あとは、植物としてのカシワが『代が途切れない』という縁起の良さを持つことも、小さくない要因として考えられます。

こうしたいくつもの要因が積み重なったことが、「丸に三つ柏(カシワ紋)が「十大家紋」の一つに挙げられるほど広く普及した」という結果を導いたといえるでしょう。

丸に三つ柏を円で囲う意味とは?

本記事のテーマである『丸に三つ柏』は、「三つ柏」紋を丸い図形で囲った形状をしています。そのため、家紋名の頭に『丸に』の語が使われているのですが、この『家紋を丸で囲う』という行為には、一体どういった意味があるのでしょうか?最後にそちらをご紹介して本記事を終わりたいと思います。

変形のバリエーションの一つ

『家紋を丸で囲う』という行為は、元となる家紋との区別のために施された『変形』の一種といえます。

「円形」の他には、「角形」もシンプルな変形の手段として存在し、複雑なものになると、「五瓜」「車輪」「熨斗輪」「鞠挟み」「藤輪」などの家紋を『囲い』に利用した例(これは "家紋同士の組み合わせ" ともいえる)もあるように、さまざまなバリエーションが存在しました。

なぜ変形が必要だったか

家紋文化には(自分から見て)「分家」や「家来」の関係性となる相手に、自らの家紋を "相続" または "贈与" するという習慣が存在しました。これは、かなり古くから、しかも頻繁に行われてきた行為だったといいます。

その際、主筋に対する「遠慮」や「(混同を避けるための)配慮」など、 "譲り受けた家紋" をそのまま使用する事がはばかられるという場合の(元の家紋との)区別のために、さまざまな変形が行われてきたのです。

※こうした主筋に対する兼ね合い以外にも、(後年)有力大名諸侯の代表紋に対して「(有力者の代表紋の希少性を守るため)そのまま用いてはならない」としたお達しが下ったことも、その要因の一つといえるかもしれません。

『丸なし』の家紋よりも普及している?

そんな中にあって、この『家紋を丸で囲う』という変形は、最も多く取られたオードソックスな手法といえます。

例えば分家の際に、「本家から相続する家紋」を丸で囲うだけで「違い」と「関連性」を同時に示せるわけで、その手軽さを考えればたしかに合点のいく話といえそうです。

また、紋付きの衣服や調度品の場合、丸で囲った家紋の方がデザイン的に収まりがよいケースが多かったことも、この変形が普及した要因の一つに指摘されているようです。

このような状況から、「丸に〇〇」に類いする家紋はオリジナルの家紋に劣らない普及率を誇る、定番家紋となっているケースが多いようで、それはこの『丸に三つ柏』紋も例外ではないかもしれません。

以上が丸に三つ柏紋の解説でした。その他の家紋の一覧ページは↓こちらから。

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