10ヶ月、場合によっては2年に及ぶ栽培期間を終え、収穫期を迎えたミシマサイコをいざ掘り起こしてみると、通常は主根がまっすぐ下に伸びているはずですよね。
なのに、その主根が短く、側根が横に発達していたり、全体が細かいひげ根に覆われたりして、正常に成長していない症状に悩まされたりした事はありませんか?
栽培歴も5年を超え、随分安定して栽培ができるようなってきた僕も、初期の頃は、そんな状況に心が折れそうになったものです。
そこで今回は、その原因と対策を記事にして公開しようと思います。あなた自身はもちろん、親族やお知り合いの方など、とにかく困っている人がいたら、ぜひシェアしてあげて下さい。
お気持ちは痛いほどよくわかります。でも、諦めるのはまだ早いですよ。
ミシマサイコは、根が完全にダメになっていなければ、地上部はそれなりに成長します。丈が伸び、たくさんの花をつけていても、地中でどうなっているかは掘ってみなければわかりません。
そして掘り起こしてみた結果が上記のようだと、落ち込み具合は半端ではありません。
「教えられたとおりに育てているのに」
「適切な時期に適切な処置をしてきたハズなのに」
「ちゃんと収量を確保している人もいるのに」
どうして自分はこうなっているのだろう。
問題は収量の少なさだけではありません。いびつな形状の根では、掘り起こしの作業はもちろん、その後の加工作業の全てにおいて、大きな支障をきたします。正常な形状の場合と比べれば、とてつもないハンデです。
こんな状況が仮に2年、3年と続けば、大半の新規参入者は、諦めてしまうでしょう。設備もまるで整っていませんから、何をするにも非効率。無理もありません。実際に僕もそんな人達をたくさん見聞きしてきました。
しかし、出来事には必ず原因があるのものです。これからその原因を挙げていきますので、その中に解決策があるかもしれません。ですから、もうひと踏ん張りしてみませんか?
原因その1:土が硬い
オーソドックスですがまずはコレ。ミシマサイコは多年生の植物の割に、早めに掘り出してしまう栽培スタイルが取られています。2年、3年と経っていくに従って、根は力強くなっていきますが、1年目はまだまだ弱々しいです。発芽直後などは、脆弱そのもの。
それを1年や2年そこらで収穫しようと言うのですから、「これ位でいいだろう」という常識的なモノサシを持ち出すのは禁物です。弱々しいなりに長く伸ばす為のサポートとなるよう、土は柔らかければ、柔らかい程よいです。
肝心の土を柔らかくする方法は、一般的で特別なことは何もありません。砂質・粘土質にかぎらず、バーク・牛糞堆肥などの繊維の豊富な改良資材をすきこんで下さい。
とにかく空気を沢山含んだ土であることが大切です。ちなみに籾殻薫炭も効きましたよ。
とは言っても、とくに生真面目な人なんかはやり過ぎないようにしてましょう。限度もありますから。あくまで[固い場合は]ですよ。
あと、有機物の分解やPh値のバランスがミシマサイコの成育に支障をきたさない範囲で行ってくださいね。
最後に、粘土質の土壌の場合は特にですが、トラクターなどで何度も耕うんして、しっかりと土を砕いてやって下さい。これは発芽率にも大きく関わる問題です。
一口に[土を柔らかく]といっても、皆さんそれぞれに状況は異なりますので、ある程度は自分の環境にあった試行錯誤が必要になると思います。
ですので、絶対的な指標を示せないのは恐縮ですが、イメージ的には根菜類で生計を立てているプロの方くらいの、土へのこだわりが参考になる感じです。僕の場合は。
原因その2:水はけが悪い
さて、問題はこっち。根が冒頭で述べたような症状になる[原因]として[土が硬い]よりも、大きなウェイトを占め、かつ深刻なのはむしろこちらの方でしょう。
何しろミシマサイコの根というのは、水に浸かるとあっという間に腐って無くなってしまいます。水はけが悪く、雨後に必ず畝間に水がたまり、その水が一日経っても捌けてしまわないような圃場の場合、必ずこの症状が起こると考えて問題ありません。
主根にどのくらい影響が出るかは、畝の高さと畝間に溜まる水の水位によって決まります。溜まった水の高さから下にある部分は、確実に腐って無くなってしまうと考えて下さい。
しかし、そのような状態になったからと言って、直ちにミシマサイコが枯れてしまうというわけではありません。わずかでも主根が残っていれば、その個体は枯れずに踏み止まる可能性は高いです。
つまり完全に水没、もしくはそれに近い状態でなければ生き残ってくれるという訳です。水位が畝の高さの半分くらいまでであれば、まず枯れてしまうことはありません。
それでは失われた部分の主根はどうなってしまうのでしょうか?そこからまた下に成長していく?
いいえ、一度このような状態になった場合、主根の伸長は、残念ながら止まってしまいます。それは主根の先端にある生長点が失われてしまうからです。この生長点がなくなれば、そこから主根が深く成長することはありません。
主根の先端の生長点が失われると、次は主根から幾つかの側根が発生し、生長点はそれぞれの側根の先端に移動します。残った根が枝分かれし、次は水平方向に根が伸びていくわけですね。
水のたまりが一時的であれば、側根が成長してくれるのでまだ救いはありますが、常に湿りがちな土壌の場合は、それ以上成長することのない、小さな主根と側根を覆うようにひげ根が発達します。
この状態になれば、収穫してもほとんど収量は見込めません。引き抜いても、湿った土の塊が根にまとわりつき、土が湿っている分、払っても土が落ちないという、ただただ辛いだけの収穫作業となってしまいます。
この水はけの悪さに対する、抜本的な解決方法は、今のところ無いのが現状です。しかし、原因はわかっているので、状況をマシにしてやることは出来ます。
それにはまず、とにかく畝を高めに立てて、栽培を開始するようにして下さい。少しでも主根の長さを保つためです。これだけで大分違います。
薬草栽培は長丁場になります。途中必ず畝間には畝から崩れた土が堆積し、畝の高さは相対的に低くなります。その低くなった畝をリカバリーする目的も兼ねて、中耕を行うのも効果的な対策です。低くなったら高くするを心がけて下さい。
逆に水はけが良く、水持ちも悪い土地である場合は、あまり畝を高くし過ぎると、今度は水不足の懸念が生じます。特に年間降水量の少ない地域の方は気をつけて下さい。(低くするべきと言っているのではありません。)
※抜本的な解決方法を思いついて、実行してみました。時間があれば、その様子を記事にしてみたいと思います。
最後に
以上のように、収量が伸びない原因というのは、根が正しく成長していないため。根が正しく成長しないのは、土壌が向いていないため。そして、どのような土壌が、どう向いていないのか?が、おわかりいただけたかと思います。
これまでも幾つか記事にしてきましたが、ミシマサイコは、とても環境を選ぶ作物だと感じています。最初から栽培に適した天候と土壌であれば、ここまで苦労することもないのですが、そうでなければ適した環境に近づけなければなりません。
ミシマサイコの栽培に適した環境を整えてあげることは、発芽や生育の早さを生み、さらには収量の増加を生み出すでしょう。生育の早さは、除草の労力を大幅に軽減するなど、栽培における合理性の向上に大いに貢献します。
手間はかかるようですが、これらの事を考えると、栽培に最適の環境を作りだす労力を割いたほうが、さまざまな面で大きなプラスを生み出すことになるのです。このブログが少しでもその手助けになれれば幸いです。